SOL 『ミライノツバサ』が良すぎてツラい

 

 

 アイドルグループ SOLの快進撃が止まらない。

 昨年、コロナ禍による活動機会の減少や一期生メンバーの卒業などの逆風を受けながらも、秋以降の精力的なライブ活動による新規ファンの獲得、11月に加入した二期生メンバーの着実な成長、その二期生たちを、ひいてはグループそのものを支えようとする一期生メンバーの安定感増など、たくさんの”底力”を積み上げていったSOL。

 そして3月、ついに待望であった7人目の新メンバーを迎え、彼女たちの反撃が始まりました。

 3ヶ月連続の単独公演や主催対バンは、毎回100人前後のキャパシティをほぼ完売し当日も大盛況。アイドル甲子園やNATSUZOMEなどのフェス系イベントにおいても、他のグループを主現場とするアイドルファンから多くの好評を得ています。

 さらに10月に開催されるTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)へ2年ぶりに出演する切符もその手に掴みました。

 

 そんな彼女たちの躍進の起爆剤の一つが、5か月連続でリリースされている新曲たちです。

 『運命のダンス』、『ドッペルゲンガーと憂鬱』、『ミライノツバサ』、『サマークラッシュ』、『エキセントリックランデヴー』の5曲は、いずれもSOLのパフォーマンスの強みをさらに活かすものばかりで、既知・初見いずれのアイドルファンにもグループの魅力を存分に伝えています。

 その中で今回は『ミライノツバサ』について、僕がこの曲を聴くのがより好きになったと同時に、聴くのがより“辛く”なった歌詞解釈をお話したいと思います。

※歌詞解釈と大仰な言葉を使っていますがあくまで個人の妄想です。この記事の目的は「みんなもこの曲はこう聴いて!」と価値観を押し付けることではなく、「あなたもぜひ自分自身の気持ちでこの曲を感じてみませんか?」という提案をしたいがためですのであしからず。

 

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 さて順を追って全体を読んでいこうと思いますが、まず大事なこの歌詞の中での一人称と二人称が指す対象について、僕は “私” が“SOLのメンバー個人”“あなた”が“僕たちファン”と捉えました。

 特に1番A~Bの部分で、かつて夢を追いながらも目の前の現実に苦悩していた様子が語られている点などに、僕の推しのきょうみの過去を思わせるところを強く感じ、この考えに落ち着いています。

 

息が詰まるような 毎日を過ごしてた

認めたくないから 言葉にも出来ずに

(中略)

そんな気持ちなんて 吹き飛んじゃうほど

世界は変わるよ こんな風に

 まず1番で語られるのはまだSOLになるより前、“私”がまだ独りでいた時の苦悩と、その後に“あなた”と出会い、そしてその存在によって希望と勇気を持てるようになった様子です。

 

果てない空に あなたがいるなら
見えない明日へ 進む力になる 

「怖くないよ」 呟いてみた

誰だってそう 上手く翔べないんだ 

 自分の努力を応援して、肯定してくれる“あなた”という存在が居てくれるならば、怖くない。

 簡単に自信が持てないのは誰だって同じ。

 

震えていた あの日のわたしへ

今ならどんな 声をかけるのだろう

七色の翼広げ 小さな世界から翔び立て

We can fly away higher

 かつての自分にも、こんな素敵な未来が待っていることを教えてあげたい。

 7人の仲間と応援してくれるみんなで作りあげた七色の翼で、もっと上のステージへ。

 

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 2番ではSOLの一員になって“あなた”と歩き出して、様々な壁を乗り越えていく姿が描かれます。

 

少し予定とは違っていても まわり道も楽しもう

そんな風に思えたのは あなたのおかげ

 過去に思い描いた空想にとらわれず、いま大切な仲間とともに歩く現実を肯定することができた。

 

突然吹く風に 荒れそうな空模様

正論なんかじゃ 晴れるか知らないけど

もう逃げたりしない 限界突破してみたい

広がる景色 眺めていたい

 無敵ってわけじゃない。大変な困難がおそってくることだってあるかもしれない。

 でもそれを乗り越えた先にあるものを“あなた”と見たいから、もう逃げない。

 

迷う時は あなたの存在が

知らない未来を 照らしてくれてる

後悔なんかに怯えないように

私の手で書き足すよ Story

 決められていた道が途絶えてしまっても、“あなた”が新しい道を示してくれる。

 だから他の誰でもない、自分自身の意志で “私”の物語の続きを描いていく。

 

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 Cメロ以降は、さらに未来の話が展開されていきます。

 彼女たちがSOLでなくなった後、“私”と“あなた”が別れた後のことが。

 

忘れたくないよ

遠く遠くなってく体温

流した涙は 光になるんだね

 いま一緒に感じているこの高揚と熱量だって、どれだけ忘れたくないと思ってもいつかは遠い記憶のものとなってしまうのでしょう。いつの日か迎えるその時に共に流した涙も、さらに未来から思い返せば美しい思い出の1ページになるのかもしれません。

 

いつか 時が過ぎて離れたとしても

素直に言えるよ「ありがとう」

ほら 世界は色を変える こんな風に

 グループでの活動を終えることで、“私”と“あなた”はお互いの目の届かないところまで離れ離れになってしまうかもしれません。それでも一緒に過ごした時間への感謝を素直に口にすることができたなら、新しい世界に向かってまた歩き出せるはず。

 

果てない空に あなたがいるから

またとない今を胸に生きていく

  一番サビでは “あなたがいるなら” という仮定だったものが “あなたがいるから” という断定に変わっていることに、二人の間の揺るがない絆を感じます。目に見えなくても、声が届かなくても、“あなた”が応援してくれていることを信じられるから、“私”は過去に縛られることなく今を生きていける。

 

「怖くないよ」 呟いてみた

もっと高く 翔べるよ

 “あなた”のおかげで言えるようになった、自分を奮い立たせるおまじない。“あなた”はもう傍にいないのに、むしろあのときよりも沢山の力が湧いてくるのはなぜなのか。とても不思議、だけど嬉しい。

 

こんな日々に泣いてる誰かへ

私がそっと手を差し伸べてみよう

七色の翼感じて 大きな空へと羽ばたけ

We can fly away higher

 今の“私”なら、誰かにとっての“あなた”になれるかもしれない。なってあげたい。

 背中の翼はもう見えなくなってしまっているけれど、たしかに今もここにある。

 

 ひとりきりだった過去から、

 みんなで乗り越えていく今を経て、

 それぞれのミライへ羽ばたいていく

 

☀️✈️

 

 以上、僕なりのそれぞれのパートの歌詞解釈でした。

 とても明るく前向きで、未来への希望と祝福に満ちた歌詞ですね。僕自身も今までSOLを応援してきた中で、それぞれの歌詞ごとに色んな場面が思い起こされて、改めて素敵な時間を彼女たちと過ごせてきたこと、これから先もっと最高の思い出を更新していけることがとても嬉しく思えます。

 

 さて、それでは一体この歌詞のどこが僕にとって辛いのか、苦しいのか。

 

 それは、Cメロ以降のあまりの美しさです。

 

 “アイドル”と“ファン”という関係を失って、いつか向かえる別れのときと、その先の未来。曲中での“私”はとても理想的な区切りと再スタートを遂げました。しかし実際に僕がその状況に置かれたとき、果たしてこれほどに潔く美しいお別れをすることができるのか、その自信がないのです

 

 交わした言葉、触れた感触、ともに見た景色が、だんだんと思い出せなくなっていくことに耐えられるのだろうか。

 別れの日に流した涙は、その先もずっと“悲しい涙”のままになってしまうのではないか。

 今ともに過ごすこの時間を、素直な感謝の気持ちとともに “過去” にすることはできるのだろうか。

 

 何もかもうまくできる気がしません。SOLのことを思い出すたびに、いつまでも悲しい涙を流すような日々を過ごすことになるのではないかとすら思えてきます。

 それほどに、いま彼女たちと過ごしているこの時間が、大切で尊い

 

 結論、未来の感情なんてものは、いま考えてもしょうがないのでしょう。より良い未来を手繰りよせたいと思うなら、今この時を一生懸命に過ごすほかありません。

 過去に残した後悔が少なければ少ないほど、きっと綺麗なお別れができるはず。

 そう信じて、僕はこれからも彼女たちを応援し続けます。

 

 いつかこの曲をライブで観るのが最後になったとき、笑顔でツバサを広げていられますように。

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